ダブリンから南へ1時間。ウィックロー県のキルマカラ Kilmaccuragh Botanic Gardensは、春5月から6月にかけて咲き乱れる石楠花(シャクナゲ)が見事な植物園です。
ジャングルのような静かな庭に大きな樹々がそびえ立ち、季節ごとの花、珍しい植物があふれています。
国立の植物園なので入場無料。
犬の散歩やウォーキングや、ちびっこの遊び場に最適。こじんまりしたカフェでは、おじいさん、おばあさんたちがおしゃべりに夢中。のどかな雰囲気です。でも実はとても長い歴史のある庭なのです。
はじめは修道院
最初にこの場所に建物をつくったのはアイルランドにキリスト教の伝わった初めの頃、7世紀の聖モコログ Saint Mochorogでした。
キルマカラ Cill mo Churra は「モコログの教会」という意味。
16世紀まで生き残っていたこの修道院は、しかしヘンリー8世がカトリックからイギリス国教へと改宗した時代に解体されてしまいます。
17世紀半ば、クロムウェルのアイルランド侵略の際にイギリスからやって来たトーマス・アクトンThomas Acton II (1655-1750)がこの付近の広大な領地の所有者となりました。1697年に修道院を取り壊して、その石で新しく屋敷を建設しました。
今でも庭の片隅にこんもりとした塚が残っています。
修道院の墓地として埋葬されていた修道士たちの遺骨は掘り返されて、まとめて埋められてしまいました。
イギリスの植民地にされたアイルランド
なぜかというと、この頃までアイルランドで盛んだったキリスト教は、カトリックだったのに対して、イギリスではヘンリー8世の時代にカトリックを捨てて王が自らイギリス国教のリーダーとなることに決めたのです。
アイルランドを植民地にしたので、その地のカトリックを猛烈に迫害したというわけです。
実際、この時代にアイルランドの各地にあったカトリックの修道院は、多くが「解体」されました。カトリック教徒を虐殺して土地を没収していきました。
アイルランド人口の15〜25%程度が殺害されたか亡命したとされています。
修道院の聖職者たち(修道士や司祭たち)は見つかれば処刑されました。
こうして、クロムウェルの侵略で、アイルランドは完全に英国の植民地とされたのです。
アイルランド人カトリック教徒の地主は追放されて、英国のアイデンティティを持つ入植者が彼らにとって代わることになりました。
美しい庭の、悲しい歴史はまだ続きます。(つづく)
キルマカラ植物園観光情報
National Botanic Gardens, Kilmacurragh
Kilbride Co. Wicklow Ireland
A67 YR12
botanicgardens@opw.ie
+353 404 48844
クリスマスを除き年中無休。
冬期 午前9時から午後4時30分まで 土日祭日は午前10時から午後4時30分まで
夏期 午前9時から午後5時まで 土日祭日は午前10時から午後6時まで
詳しくはホームページを参照してください。
http://botanicgardens.ie/kilmacurragh/
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