ヒマラヤで採取した種から育てた花
こうして、ここキルマカラの地の地主となったアクトン家の人々は、代々この庭と館を受け継ぎ、樹々や花を植え育てました(庭仕事をしたのはアイルランド人の庭師たちですよ、もちろん)。
トーマス・アクトンの息子ウィリアムの結婚(1736年)を記念して植えられた並木道、19世紀にはダブリンの植物園から友人が持ってきた珍しい植物。
ダブリンよりも暖かく土壌も異なるキルマカラの庭では、ダブリンでは育たない植物もうまく根付いて成長していきました。
進化論のダーウィンとのつながりも
石楠花は、イギリスの著名な植物学者サー・ジョセフ・ダルトン・フッカーがインドとチベットの国境近くのシッキム州から採集してきたもの。1850年にダブリン・グラスネヴィンの植物園に送られ、そこで育った若木がここキルマカラに送られてきました。
このジョセフ・ダルトン・フッカーという人は、進化論を考え始めていたダーウィンが「種の保存」を出版するべきかと悩んでいたときに励ました親友だったのです。インド、ヒマラヤへ調査旅行に出かけて、ヨーロッパ人として初めて、ヒマラヤで植物を採集し研究しました。
調査旅行では一時は現地のラジャの捕虜になったこともあったとか。
https://en.wikipedia.org/wiki/Joseph_Dalton_Hooker
古い樹々と新しい植物の混在する植物園
20世紀アクトン家の末裔、チャールズ・アクトンは第1次世界大戦で39歳の若さで戦死。後を継いだ弟のレジナルドも8ヶ月後に戦死。アイルランド人の庭師たちも皆イギリス軍兵士として出征。アクトン家は結局、300年にわたって育ててきた庭を、1944年に手放さざるを得なくなりました。
その後ようやく1996年にアイルランド政府がこの土地を取得し、国立植物園として生まれ変わる時代を迎えました。荒れ果てていたキルマカラを少しずつ手入れして古い樹々を保存し、新しい植物も加えながら、活力ある庭に育てています。
生命あふれる美しさ
いま、植物園の世話をしている専門家は7人。散歩の途中で質問をしたりすると、仕事の手を休めていろいろな話をしてくれます。
ここはとても古い時代に植えられていたものと、最近植え始めたものが混じっている。間の放置されてあった時期のものがない。それでも、今でも「あれ?こんなところに、こんなものがあったのか」という発見が毎日のようにあるのだそうです。
くりかえし訪れると、季節ごとに、歩くたびに、色とりどりの花、不思議なかたちの植物や大きな木にパワーをもらいます。長い歴史を生き抜いてきた庭は、生命あふれる美しさです。
キルマカラ植物園 観光情報
National Botanic Gardens, Kilmacurragh
Kilbride Co. Wicklow Ireland
A67 YR12
botanicgardens@opw.ie
+353 404 48844
クリスマスを除き年中無休。
冬期 午前9時から午後4時30分まで 土日祭日は午前10時から午後4時30分まで
夏期 午前9時から午後5時まで 土日祭日は午前10時から午後6時まで
詳しくはホームページを参照してください。
http://botanicgardens.ie/kilmacurragh/
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