6月はアイルランドでも雨がよく降りました。
雨の晴れ間の日に、家から20分ほどのアッシュフォード(Ashford)へ。
マウントアッシャーガーデン Mount Usher Gardens 隠れ家のような素敵な庭園です。
ヴァートリー川の流れに沿って、広い庭をぐるっと一回り、散歩しましょう。
始まりは、小さな水車小屋
マウントアッシャーガーデンの今あるところは、もともと湖だったそうです。
エドワード・ウォルポール(Edward Walpole)という人が、この場所にあった小さな水車小屋と2エイカー(2500坪)ほどの土地を買ったところから始まりました。
ウォルポール家は、19世紀に麻の繊維工業で財を成した家でした。
そのウォルポール家の当主エドワードは、ウィックローの山を歩くのが大好きで、ダブリンからアッシュフォードに来ては、近くのハンターズホテルに泊まっていたのです。
そうして通っているうち、地元の粉挽きのサム・サットン爺さん(Sam Sutton)と友だちになり、ホテルに泊まらずにのサム爺さんの水車小屋に泊まりに行くようになったのです。
水車小屋は、はじめは毛織り物の汚れを落とす水通しの仕事をしていました。産業革命で毛織り物の仕事は機械でするようになって、トウモロコシを挽いていました。
水車小屋のあった場所に、今は家が建っています。
庭園の真ん中あたりの川のほとりです。
水車小屋の前に狭い庭があって、サム爺さんがジャガイモ畑を作っていたそうです。
1868年(明治元年)サム爺さんが水車の仕事をやめたとき、エドワードが水車小屋と土地を買いました。
この場所に、
「自然を生かした庭園を作ろう」
と心に決めたエドワードの第一歩でした。
それから100年にわたって、ウォルポール家の子孫が代々、少しずつ土地を買い足しながら、南北アメリカやアジアなど、世界各地から集めた珍しい木々を植え育てました。
今では20エイカー、つまり約8万平米、日本の単位でいうと2万4500坪ほどの広さの庭園です。
東京ドームの1.7倍の広さと言ったほうがわかりやすいかもしれません。
その広大な庭に、5000種類もの植物が植えられています。
自然を尊重する庭づくり
エドワードが庭を作ろうと決めた背景には、その頃に有名だったウィリアム・ロビンソン(William Robinson)の考えがありました。
それまでの庭園は、部屋の中の装飾を庭にまで延長するような、豪華で人工的なものでした。
温室で作った花を、カーペットのように敷き詰めて、植える。
豪華なバラの香りでいっぱいな庭園。
例えばフランスのヴェルサイユ宮殿やロワール川沿いの城の庭のように、幾何学模様などの人工的な形に作り込んだ庭がもてはやされていました。
しかし、1838年にアイルランドで生まれた造園家ロビンソンは、自生する草花の魅力を生かして自然を尊重する庭園のありかたを求めました。
長い年月を経て、少しずつ成長して壁を覆う、ツタやクレマチス。
岩の庭に可憐な色の映える山野草。
雑草のように見えても美しい色合いで競い合うように咲き続ける多年草。
自然環境に配慮しながら、木々や花の野生の魅力を活かすという考えは、その頃1880年代からイギリスでウィリアム・モリスが中心になって盛んになったデザイン運動、アーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement、美術工芸運動)の流れをくむものでした。
ロビンソンの考えは、ガーデニングの目指すイメージを、根本的に変えるものでした。
緑にひたって心癒される散歩
大きくそびえる木々を眺めながら、川にかけられた吊り橋を渡りながら、散歩道をたどっていくと、季節ごとに様々な植物の姿が見られます。
いまの季節は色とりどりの紫陽花の花の色が川に映っています。
日本ならお寺の庭を静かに歩くような感じです。
緑したたる木々と川の音に耳を澄まし、心癒される、庭園散歩。
また次に訪ねるときは、どんな花が咲いているでしょうか?
ビデオもご覧くださいね。
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